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TERIYAKI MACARONI
 岸野君に、いつも夢もみずにバカみたいに眠ったりする能天気なやつ、と言われた。
 でも、その夜に夢を見た。

 そこは外国のデパートの地下の食品売り場で、通りかかっただけなのに誰かがお前も
コンテストに出ろ、と言う。
 急いでるのになぁ、と思いながらも、参加することになった。

 パスタがテーマだったので、私はチーズマカロニを作ることにした。
 審査員は道ゆく人々なので、1人で100人分くらい作らなければならない。
 で、クマが行水できるくらい大きな鍋に、100人分くらいのマカロニを入れた。
 鍋を火にかけ、時間がないので他の食材を探しに行く。食材は食品売り場で勝手に
とってくるのだ。
 食品売り場がとても広いので、割と時間がかかって、茹ですぎたかもしれない、と
焦って戻ると…、

 私がかけていた鍋が火からはずされているじゃないか!
 びっくりしていると、横にアル・パチーノさんが立っていた。
 「パスタの湯で加減を知らないのか?火から外しといてやったぞ」
 彼は少し怒ったように言った。

 旨をなで下ろしながら礼を言うと、いかめしい顔で更に言われた。
 「味もつけといてやったから」

 すごい大きなお皿の上に、茶色のソースが絡んだマカロニがあった。
 何味ですか?と、恐る恐る聞いた。

 すると、アル・パチーノさんは、バカだなお前、という顔で
 「テリヤキ味に決まってんだろ」と言った。

 私は大きなショックを受けながら、軽い憎しみをアル・パチーノさんに覚え始めた。
 彼は私の作品として、それをコンテストに出そうとしているのだ。

 テリヤキ・マカロニは皿の上で湯気を上げながら、妙にテカテカと輝いている。
 そして、すごくマズそうだった。
by hollysplings | 2011-02-23 13:30
白い世界
 雪が降りましたね。家の前の道にはまだ少し残ってます。固いやつ。

 横浜市の片隅に住んでいた小学生の頃に雪が降った時、私は嬉しくて外に遊びにでかけました。
 遊んでいる内に寒すぎて、友達の家にみんなで避難。

 友達の家は卵屋さんでした。鶏舎があって、卵を量り売りするやつ。
 彼の家はみんなが知っています。鶏糞臭い家なんて他にないしね。

 春になると彼はみんなに仕入れたばかりのヒヨコを見せてくれました。
 その気があれば鶏舎の中にも入れてくれます。
 ブロイラーの鶏達はあまりに気が立っていて、近寄りたくはなかったけど。

 その冬の日に、彼のお母さんがおやつを出してくれました。
 おばさんは店番をしているので、いつも忙しそうで、無愛想な人。
 彼の家で、おやつが出るのはそう滅多にあることでもなかったはず。
 だから、みんな一瞬静かになって、こたつの上に置かれたおやつをじっと見ていました。

 それはかごに山盛りになったゆで卵だったからです。

 彼は美味しそうにバクバク食べていましたが、私は自分がそれを食べたのか記憶がない。
 けれど、あの薄皮と共に白みがはがれてくる、あまり丁寧ではないゆで卵ではなかったです。

 なんとなく、すげーなぁ、と思いました。
 今思うと、圧巻ってああいう感じかもしれない。
by hollysplings | 2011-02-16 22:58
カポーティ
hollysplingsのspecial thanksにも名前を(勝手に)連ねたことのある
トルーマン・カポーティの「夜の樹」を再読。
読んでみると、すごいんだけど、なんか不気味だな。

で、その後に「ティファニーで朝食を」を読んでみた。
20代前半に読んで以来、初めて読み返しましたが、
その当時はあまり印象に残らなかったのに、これがすごく面白かった。
不思議だ。

カポーティは小説の舞台によって、完全に豹変する何かがあって、
まるで違う人格のようなその二つが交差する感じが一切ないのがすごい。
どっちもすごく面白いのですが、私はハートウォーミングなアラバマものに
惹かれます。
昔は孤独なNYものをカッコいいと言いたかったので、クールな顔をしてました。
でも、多分それ、嘘です。
そういう嘘を積み重ねるのが、重要な気がしてました。いやぁ。

やはり20代の頃に手に取って挫折している「冷血」も今なら読めるのかなぁ?
by hollysplings | 2011-02-09 08:10
Soul Brother
 週一で書くように言われてから一ヶ月が経過して、既に苦戦中です。
 こういうところに何かを書くのは、なかなか難しいものだなぁ。

 悩み事とか書いたらいいのかもしれないな、とちょっと思ってみたけれど…
 悩みがあまりないようです。岸野君にもよくバカにされます。悩み事のない奴だ、と。

 みんなも大好きだと思いますが、
 ビバヒル(「ビバリーヒルズ90210」のことです、もちろん)の中で、
 ドナ・マーティンも、「私、打ち明ける悩み事がないの!」って言ってました。

 ドナ・マーティン。
 彼女にはいつも、ある程度の驚きを覚えながら見入ってしまいます。
 そして、その時にはいつも一つの光景が頭を横切ります。

 それは、暑い夜でした。

 ホームステイ先に、初めて学校でできた日本人の友達を招いた夜。
 スチューデント同士で家を行き来するのは、週末の過ごし方の王道だったのです。
 とはいえ、その友達と2人きりで長時間過ごすのも初めてだし、
 その上、彼女はひどいホームシックにかかっていました。

 その家は、山の中にある静かな家で、私の部屋は庭に面した開けっぴろげな空間で、
 大きすぎるサイズのベッドに、誰がきても一緒に寝させられるのですが、
 並んで天井を見上げながら、彼女はオーストラリアに関する思いつく限りの悪口を
 言っていました。
 日本に彼女が残してきたものや、恋しがっている全てのものについて、
 終わることのない話を繰り返し続ける彼女に、多少げんなりしながら、
 私はひそかに窓の外を見ていました。

 庭の向こうにはケアンズ市街の夜景が広がっているはずですが、
 寝転がったまま見上げても、湿気った雨期の夜空が見えるくらいでした。
 果てしない憤りが蔓延する部屋の中では、救いのように広々とした空でした。
 自分の国を離れた後で、ホームシックというのは一つの厄災のように忍び寄ってくるので、
 私としては釣られたくないので、あまり耳を傾けないように、暗闇の中で何か違うことを
 考えることにしました。

 気づかぬ内につぶやいていました。
 「ビバヒル見たいなぁ」

 彼女は、突然ガバッと跳ね上がるように体を起こして、
 「今、ビバヒル見たいって言った?」と言いました。
 呆気にとられながら、私は頷きました。

 そこから、話は一変し、ビバヒルの話しかしませんでした。

 私はその夜に彼女が訴えたかった、切実な気持を具体的に思い出すことはできません。
 でも、次の一言はよく覚えています。

 「ドナってあいつ、黒人だもん」
 彼女はそう言いました。
 
 言われてみると、ドナ・マーティンには
 アフリカン・アメリカンのソウルがあるような気がしました。
 そうでなければ、あんなキャラクターにはならなかったかもしれません。
 ケリー・テイラー的な女の子は一人で充分なのだから、
 ドナは違うソウルを持っていなければいけないのです。

 そうだな、ドナ。お前は確かにクールなブラザーだぜ、いつだって。
 そしてあの夜、心細さの中で静かに戦っていた、情けない若者を確かに救ってくれたのは
 君の魂なんだぜ。

 サンキュー、ブラザー。
by hollysplings | 2011-02-02 22:14


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